肝臓がんの予防~安心感が免疫力低下防ぐ
2004年7月15日、日刊スポーツ
肝臓がんの予防
最近の研究から、小柴胡湯(しょうさいことう)には、慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんへと進行していくのを抑える作用があると言われている。
しかし、東京女子医大付属東洋医学研究所の佐藤弘助教授によると、こうした効果があるのは小柴胡湯だけではないらしい。
小柴胡湯はあまりに有名なので、一般の病院では肝炎の漢方薬といえば小柴胡湯が使われることが多い。しかし、佐藤助教授は患者の証(漢方的体質)に合わせて、さまざまな漢方薬を使い分けている。こうした患者140人を平均5年間観察して、肝臓がんの発生率を調べた。
肝炎は、病気の進行と平行して血液中の血小板の数が少なくなる。血液1マイクロリットル中に含まれる血小板の数は、普通20万個ぐらいだが、これが10万を切れば重症。すでに肝硬変の状態で、年間7%の割合で肝臓がんが発生する。10~13万個の間ならば中等度で肝臓がんの発生率は年3%とされている。
ところが、漢方薬をのんでいた佐藤助教授の患者さんは、血小板の数が10万以下の重症の人でも肝臓がんの発生率は年に0・9%、10万~14万個の人ならば1・5%と肝臓がんの発生率が驚くほど低かったのである。中には「25年間、血小板の数が10万未満のままで、肝臓がんにならない」人もいるそうだ。
つまり、漢方で治療を受けている人全般に肝臓がんになりにくい傾向があるというのだ。
「もちろん、漢方薬が肝臓がんの発生そのものを抑制する方向に働くことも考えられます。しかし、慢性肝炎の患者さんは不安でいっぱいなのです。腰痛や肩凝りなど肝炎とは関係ない症状でも悪くなると、肝炎が悪化しているのではないかと不安になる。漢方薬はこうした細かい愁訴に対応して患者さんを安心させることができます。それによって免疫力の低下を防ぐといった効果も無視できないと思うのです」と、佐藤助教授は考えている。
慢性肝炎の漢方
小柴胡湯など柴胡を含む漢方薬のほか、胃のもたれや食欲不振など消化器症状が中心ならば六君子湯(りっくんしとう)など人参主体の漢方薬、激しい倦怠感や寝汗が中心ならば十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)など、数十の漢方を使い分けている。慢性肝炎の漢方薬は医師の管理下で服用することが大切。
インターフェロン遺伝子組み込み がん細胞消えた 免疫力高め増殖抑制 京大助教授らマウスで実験
1992年10月1日、中日新聞
免疫機能を高める生理活性物質インターフェロンの遺伝子を、マウスのがん細胞に組み込み、がんの増殖、再生を抑える実験に京大薬学部の渡部好彦助教授らが成功した。がんの遺伝子免疫療法につながる成果で、1992年10月1日、大阪市で開かれている日本癌(がん)学会で発表する。
インターフェロンには、アルファ、ベータ、ガンマの3種類があり、今回使われたのはガンマ型。渡部助教授らは乳がん、ぼうこうがんなど4種類のがん細胞を取り出してインターフェロンの遺伝子を組み込み、マウスの皮下に戻した。がん細胞は約2週間増殖を続けたが、その後、減り始め、3-4週間でほぼ完全に消失した。
また、がんが消えたマウスに再び、普通のがん細胞を移植したところ、増殖はしなかった。これは、がん細胞が遺伝子の指示でインターフェロンを生成し、免疫機能を担うキラーT細胞などのリンパ球を活性化させ、がん細胞への攻撃力が高まったためらしい。インターフェロンは既に、抗がん剤として治療に使われているが、発熱などの副作用が出ることもある。
渡部助教授は「人体への応用は十分可能で、遺伝子を組み込むだけで済むので、副作用も少ない。患者からがんを摘出し、その細胞にインターフェロンの遺伝子を組み込んで体内に戻せば、がんの転移や再発を防げる。しかし、遺伝子を操作することになるので倫理的な問題もあり、日本での臨床応用には時間がかかるだろう」と話している。
がんの遺伝子治療、米で第2弾着手-不活性化細胞で免疫強化
1991年10月9日、北海道新聞
米国立衛生研究所(NIH)がん研究所のスティーブン・ローゼンバーグ外科部長らは1991年10月8日、皮膚がんの一種、悪性黒色腫(しゅ)患者を対象に、遺伝子組み換え技術で不活性化したがん細胞によって患者の免疫力を強める治療を開始した。
博士らは1991年1月、同様の黒色腫患者に対し、腫瘍(しゅよう)壊死(えし)因子(TNF)の遺伝子を腫瘍浸潤リンパ球に導入する世界初のがん遺伝子治療を始めており、今回は第2弾。
バーナディーン・ヒーリーNIH所長は「遺伝子組み換え細胞をワクチンのように使う今回の方法は、がん治療に新たな分野を切り開くものだ」と評価、黒色腫に続いて結腸がんや腎臓(じんぞう)がん患者への治療も進めることを明らかにした。
がん研究所の発表によると、治療を受けたのは黒色腫が進行し、他に治療法のない46歳の男性。
ローゼンバーグ博士らは約3カ月前に患者からがん細胞を取り出し、遺伝子組み換え技術を使って、抗がん剤として注目されるTNFの遺伝子を注入したうえ、培養してきた。治療初日にはこのうち約2億個を患者の太ももに注射した。
